昨今の感染拡大により、
「やはりテレワークを導入しておきたい」
という企業様からご相談を頂く機会が、
最近また増えています。
テレワークについて、簡単ではありますが投稿しておきたいと思います。
(私自身の導入実績 約40社になります)
普段の弊事務所での業務の他に公職としまして、
昨年度は総務省、
今年度は厚生労働者による
「テレワーク・ワンストップ・サポート事業」にて
テレワークマネージャーを拝命しています。
年間3回までテレワークマネージャーによるコンサルティングを無料で受けて頂けますので、
是非、お気軽にご活用ください。
【オンラインコンサルティングで、全国対応可能】です。
ご興味ありましたら、弊事務所までメールまたは
お電話にてお問い合わせ下さい。
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★を@に変更して、お送りください)
テレワークの導入に関しましては、
「テレワーク特有の労務管理」に於ける課題も
多々あります。
その一つ、
「手当について」のご質問はよくあります。
「週に数回、テレワークを実施している。
出社日数が従来の半分になる社員さんの通勤手当は
どうするか?」
(個別の事例対応となりますが、
通勤手当として支給するケースと、
恒久的なテレワークを見込む場合に、
通勤手当を対象社員に支給することは辞めて、
出社の際は実費を支給するケースがあります。
ご質問がありましたら、
詳しくは個別の事例で回答いたします。)
また、テレワークに多い手当として、
「在宅勤務手当」があります。
在宅勤務手当を支給する場合は、給与計算の際、
時間外労働に於ける割増賃金の基礎となる金額の算定に含んで計算します。
また「在宅勤務手当は課税対象として取扱う必要」があります。
これは、在宅勤務手当は「給与の一部と見なされる」ことによって、所得税の課税対象となるためです。
他方で、在宅勤務を行う社員に会社が支給する「通信費」は、一部非課税とされています。
国税庁のホームページに記載がありますが、
2021年1月15日、
在宅勤務の日数に応じた通信費の一部を、
所得税の課税対象から外す内容が発表されています。
それに寄りますと、
「在宅勤務手当としてではなく、
企業が在宅勤務に通常必要な費用を精算する方法により従業員に対して支給する一定の金銭については、従業員に対する給与として課税する必要はない」
つまり、【非課税扱いとする内容】が記載されています。
在宅勤務時の通信費に関する税制上の取り扱いが
国税庁で明確となった事を踏まえての見解になりますが
企業が通信費の取扱いを思案する必要はないため、
【手続き面で、通信費を社員に支給しやすくなる】
【在宅勤務、テレワークに従事する社員の金銭的な通信費による負担を軽減するメリット】
これらの効果が期待出来ます。
●ご参考
在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ
(源泉所得税関係)
令和3 年1月 (令和3年5月31日更新)
国税庁ホームページ URL
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0020012-080.pdf
その他、
セキュリティ面やICT環境、
DXの整備などの課題がありますが、
一番難しいのは、
テレワークや在宅勤務、リモートワークに従事する
「社員の労務管理」だと私は考えています。
その理由を述べていきます。
出社と違う働き方により、
テレワークで働く社員は、
【使用者の直接の指揮命令下にない就労環境】に於いて業務に従事することになります。
そうなると、具体的に顕著になるのが、
・KPIの管理や運用面の課題。
(「Key Performance Indicator」の頭文字。
「重要業績評価指標」のことを言います。
目標を達成するプロセスや、
それらの過程に於いての達成度合いを計測したり、
監視したりするために定める、
「定量的な指標」です。)
・業績(パフォーマンス)の把握
・「出社時に比べ、ローパフォーマーとなる社員に対する指導や改善策を講じる必要性」
往々にして、これらの課題がテレワークで生じてきます。
厳しい表現になりますが、
在宅勤務やテレワークに社員が従事する際には
「自主性」「能動的に業務に取り組める姿勢」
これが非常に強く求められるのですが、
加えて、
「社員の自律面と自己管理能力」が非常に重要になって来ます。
①自ら仕事の段取りやスケジュールを考えて実行出来る人
②約束や締め切りを必ず守れる人
③連絡やレスポンスがきちんと対処出来る人
④関係性が良好に保てる人
上記が「求められる人物像」となりますが、
そうでない場合は残念なことに、
「テレワークだと業務が成し遂げられない社員がいる。その社員について、企業側はどの様に対処していくべきか?」
という課題が生じて来ます。
非常に厳しい表現を先にお詫びして記載しますが、
上記の様なケースでは、企業側は、
【社員の持つ様々な能力の差が顕著に現れてしまう】というシビアな現実と向き合わなければなりません。
その場合、「再教育や配置転換」などを、
該当する社員に対して実施するほかに、
将来的には、
「企業側はどう対応していくのか?」
つまり、テレワークの運用そのものと向き合い、
課題を解決していく必要性が生じてきます。
根本的な部分から問題を解決していく事が重要です。
DX導入やクラウドツールを取り入れることで、
業務の効率化やパフォーマンスに繋がる場合もあります。
人事面で、社員の自主性や自己管理能力、自律面や関係性を再教育する際には、かなり掘り下げた深い内容の指導や研修の必要があり、そうする事によって労務管理面での改善やスキルアップの向上も期待出来ますが、DXやクラウドツールの導入(システム開発など)や社員に対して実施するそれらの再教育などには、それなりの費用の捻出や時間を費やすことも必要となって来ます。
本来、テレワークや在宅勤務の導入は、時間をかけて計画し、少しずつ実施していくことが理想的です。
【テレワークによる就労環境の付加価値やメリット】を社員が享受出来ることで、より一層、スムーズで円滑な導入に繋がって行く事例を、私自身、多く見て参りました。
一方では、新型コロナの初期の頃の日本。
2020年の緊急事態宣言が出た当初、
「感染対策としてテレワークを」と、
急いで取り入れた企業が多かったため、
整備や体制が不充分なまま導入した事例も非常に多く見受けられました。
そのため、テレワークの運用が上手く行かず、
感染が落ち着くと、
「やはり出社に戻します」となったケースも少なくありません。
少し難しい表現と、専門的な見解になりますけれども、そもそも、 テレワークが普及しているアメリカやイギリス、フランスなどの欧州に比べると、
「メンバーシップ型」がメインの日本では、
雇用形態の差異が顕著です。
アメリカやイギリス、フランスは
「ジョブ型」が多い特徴があります。
ジョブ型であれば、社員は、
「この業務だけ担当します」という取り決めがあり、あらかじめ雇用契約で定められています。
その為、テレワーク・在宅勤務の際にも
「行う役割分担」が最初から労使共に明確になっているため、テレワークに取り組みやすいのです。
一方で、日本に多い「メンバーシップ型」では、
業務(職務)の内容が幅広く、
例えば事務職であっても
「電話応対、窓口での来客応対も業務に含む」
などの事例が多いため、
一例ですが、事務職の社員が接客や対面業務を兼ねているケースでは、在宅勤務やテレワークとなった際の対面接客の対処法や社内体制について、あらかじめ取り決めておく必要があります。
上記の理由から、日本でテレワークを導入する際には丁寧な準備が必要であり、そして、実施していく際には様々な運用を工夫していかなければならない…ということになります。
その辺りを曖昧にして導入してしまうと、
「取り組んではみたものの、上手くいかない」
という問題が必ず発生します。
予測出来る課題を洗い出し、あらかじめ想定して、
対処方法や対策、運用体制を構築しつつ慎重に導入することによってリスク回避は可能になります。
今回、難しい問題点を記載していますが、
他方で、テレワークのメリットも非常にたくさんあります。
私の経験からの見解になりますが、
【テレワークによる就労環境の付加価値を高める。】
【メリットと働きやすさを明確にする】
という環境整備を行い、慎重に実施していくことで、社員もテレワークを希望し、
状況を前向きに捉え、受け入れていくケースが多いです。
テレワークのメリットや付加価値に関しましては、
次回の投稿に記載したいと思います。
今後の多様な働き方の一つとして、
是非一度、テレワークの導入についてもご検討を頂けますと、テレワークマネージャーとして、そして社労士として、私自身も大変嬉しく思います。
酒井世津子社会保険労務士事務所
https://www.sr-sakaioffice.com/